志ろがねより愛をこめて 2005年8月 

高校卒業後の進路 平成17年8月2日(火)

 前略、皆様、もう8月になりましたね。
  土用に入り、うなぎでも食べたいと思っていますが、以前なら高級感のあったうなぎでも、今は中国産のお陰で手頃に食べられるようになりました。
 何て言っては見ても、まだしばらくは食べられそうにもありませんが・・・? 食いてー!

 夏休みに入って色々日程も入り組んでいますが、高校2年の令子は、知人の紹介で、岩手町の医院に社会見学に行きました。
 高校卒業後の研修先としての下見になっており、7月26〜29日までの3泊4日で無事に行って来ました。

 感想としては、行って良かった。
 色々な事が大変だけど、やり甲斐のある仕事だと思った。
 院長先生の発想のすごさを感じて圧倒されて来たようです。
 卒業後の進路に自信を持ったようでした。

 私の主義として、高校卒業したら一年づつ場所を変えて、2年間は社会勉強させて頂く方針です。
 給料を頂く以前に、人様に喜んで頂く研修のつもりです。
 実際にはどうかは分かりませんが、又、早く給料を頂ける方が助かるのは助かりますが、それを急ぐより人間教育の方を優先したい気がします。

 子の思いとは裏腹かも知れませんが、親としましては最善の努力をしたいものです。
 これは必ずしも子どもが望むのとは違うかも知れませんが・・・?
 令子が高校3年を卒業すると、社会人を4人目の輩出になりますが、何とか役に立つ人間として送り出したいものです。
 意気込みはありますが、実際にそうなる保障は一切ありませんが、それも緊張感があり、良いことだと思います。

 親とのご縁や子ども達とのご縁もそうですが、自分の将来とのご縁も、大切に受け止めて歩んで行きたいものです。
 判断材料を主観からご縁に置き換えると、実に素直に全てを受け止められるようになります。
 ご縁を素直に受け止められるようになると、迷いが無くなります。
 迷いが無いという事は、不安が無いと言うことです。

 同じ歩むなら迷い無く不安無く歩みたいものです。
 余り心配する事無く、神仏の思し召しに委ねれば、「無」になれます。
 邪念も欲も無く生きられれば、幸せの骨頂でしょう。
  自分の幸せを自分のモノだけにせず、人様に還元する意気込みがあれば良いのだと思います。
 終いにはそこに行けるのだと信じつつ!
 明るく胸張ってと思っています。
 究極の生き方と言えるかもネ。
 田野畑村に夢を掛けて・・・・、と思います。

 皆さんお元気で!草々。




お盆・考 平成17年8月16日(火)

 前略、皆様お元気ですか?
 今年もお盆が来ましたネ。皆さんのお盆は如何ですか?

 普段は閑散とした村もさすがにお盆は賑やかで、方々の喜びが伝わって来るようです。
 笑い声があふれている様子は、豊かさを生んでいると思います。

 かつてのお盆の記憶は、つらい思い出でした。
 一人での入植は寝ても覚めても一人ぼっちでした。
 お盆や正月はどこのお宅にも車が数台止まっていて、花火や楽しく飲んでいる場面を見るに付け、8人の大家族で育った者としては、淋しい限りでした。
 沢山の子宝に恵まれて賑やかに日々過ごすことが、ある意味目標になりました。

 独身時代に栄養失調になり、気の毒に思い、来てくれたカカ様が、7人の子を産んでくれました。
 お陰で今は逆に賑やかな家になりまして、本当に幸せを感じています。

 ただただ山地酪農の実現を夢見て来ましたが、思い返せばやはり、お盆と正月はホームシックになったものでした。
 極めつけは、ある時東北線を越えて秋田県に仲間と行く時、線路の上で上野方面を見た瞬間、「この線路は上野に通じている。」・・込み上げてくるものがありました。
 仲間に涙を気付かれない様に必死でいました。

 春と秋の年に二度、衣替えに来てくれていた母が、帰りにはなるべく何食分かの食事を準備してくれていました。

 電気も無いので勿論、冷蔵庫もありません。
 味噌漬けや塩漬けで日数を稼ぐしかありませんでした。
 準備が済むと母は帰ります。
 普代のバス停やJR岩泉駅で何度別れたことでしょう。
 最も本当は大卒で田野畑村に移り住む時、二度と会えない覚悟を決めてきた筈なのに・・・。

 そうして嫁さんを貰い、子を授かり、別れの場面でも一人ではなく、むしろ大人数での見送りになりました。
 淋しさは乗り越えました。

 気が付けば自分が当時の父母の年になっております。
 今、人生を思い、つくづく人生は短いと思います。
 だから若い者に言いたいのは、
 「人生の目標を定めてマッシグラニ進め!遊んでいる暇は無い。」
 本人はマッシグラに進んでいるつもりでも、必要な道程は踏まざるを得ないから。
 与えられる道程は成長への必要条件。
 ただ必要なのは目的・目標だ。
 年を取っても忘れたくない思いです。
 いつもそれなりに目標を持ちたい。
 でも限られた時間の中でするのだと言うこと。

 ただ成果が生まれる保障は無いよネ。
 生む意気込みだけで進むしかないよネ。草々




雪の女王・考 平成17年8月23日(火)

 前略、皆さんお元気ですか?
 東北の短い夏休みが終り、また日常の生活が戻ってきましたネ。
 遠くで生活している子どもさんが家族を連れて来ましたか?
 楽しくお盆を過ごせましたか?
 でも終わってみると、楽しいお盆も短かったですね。
 今度はいつ来るのかを考えてしまいますね。
 ちょっと淋しさを感じます。

 さて今日は、アニメの「雪の女王」の一場面で、旦那が最初は馬を牛に交換して、牛を羊に交換して、羊を鶏に、と次々に交換して行く内に、最後は一袋のりんごになってしまいます。
 交換を重ねる度に、損してしまうのですが、彼の奥さんは、
 「そうですか、まあ素敵だわ、人に借りなくてもこんなに沢山のりんごを料理に入れたり、食べられるんですもの。」
 と言って喜んで見せる。
 この場面に痛く感動してしまいました。

 貧しい百姓夫婦が、きっとなけなしの財産の馬を食糧かお金に交換して来る積もりだったのでしょう。(前回を見ていないので想像ですが)
 精一杯やっているのに交換する度に、損してしまう現実。

 何か過去の自分と重なって来ます。
 明らかに損している事を責められるのと、受け入れられ、許されるとの違いがありますが。
 普通は責められるのでしょう。
 受け入れ、許せる人はそうはいないでしょう。
 こういう旦那と結婚してしまったのもご縁。
 ただ権利や義務を主張するのではなく、ご縁を素直に受け止め、旦那の可能性が育ち、花開くのを待って欲しいし、旦那の心や夢を共有して欲しいナーと思いました。

 太閤秀吉が信長に使えて、初めての給料として、大量の塩を頂いて帰った時、貧しい母は
 「お前が初めて給料を貰った。」
 と、たかが塩を泣いて喜んだのは有名な話です。

 旦那の(旦那に限らない)精一杯の努力を信じて感謝してあげる。
 これは究極の優しさ?じゃないかと思います。
 未熟者の人間を、真心を持って受け入れることが出来る人が、本当に人を成長させることが出来るような気がしてきました。

 たかがアニメですが、また、主人公のゲルダの行動は、幼なじみのカイを助けたい一心で旅に出ましたが、だまされたり危険な目に遭ったり、でもその度に何とか救われるのでありました。
 アンデルセンの人を見る厳しく正す目を感じます。

 私たちは日常生活をする中で、お金に執着したり、効率に執着したりしがちですが、本当に大切なのは勿論違います。
 現実の生活の中で問題に出会った時、どう対処しているでしょう。
 生きる姿勢を問われますが、童話でも大したものですネ。
 お恥ずかしい限りです。元気に仲良く頑張りましょう。草々。




酷暑の乳牛 平成17年8月30日(火)

 前略、皆さんお元気ですか?
 もう8月も終わってしまいます。そして夏も終りですネ。
 お盆が過ぎたら猛暑・酷暑の夏も一緒に過ぎて行った感じです。

 牛たちにしてみれば、酷暑の間、アブの猛攻とサシバエの数そして高温と、生命に関わる自然の猛威を一身に受けなければなりませんでした。
 なぜ生命に関わるのかと言うと、食欲を無くすからです。
 気温が下がってもアブが沢山いれば、食うどころではありません。
 仕方がないので昼間の間だけでも食えるように、草畑(採草地)から草を刈って持って行ってあげたり、サイレージになった草を持って行くとか、配慮してあげないと牛がダウンしてしまいます。

 7月の末に梅雨が開け、夏らしい天気になってきた頃から、暑さとアブの二重攻撃でした。
 お盆までの小一ヶ月は毎年の事ですが、日中は補食を切らさない配慮がないと、牛はダウンしてしまいます。

 今までには分かっていても手が回らずに殺してしまった牛もありました。
 申し訳ない限りです。
 殺さないまでも捕食して体力維持をしていないと、お盆過ぎの涼しい時期になっても、山を食い歩いて生活する元気が残っていません。
 今夏は涼しくなったらすぐに山で食い歩いている所を見ると、良い夏越しが出来たのでしょう。

 今は毎日、牧山の高い日陰まで食って上がって行き、休んで食み返して、また食いながら降りてくる生活のようです。
 カランコロンとカウベルが響くようになりました。
 もう安心、補食しないでも自分で生きいきと食って来ます。

 そしたら大したもので、みんなの毛ツヤがたちまち良くなって来ました。(と言っても一般の酪農のようにピカピカではありませんが)

 牛たちが日々元気に生活できる環境整備は必要ですが、極寒期・酷暑期も放っておいてもアブに負けない、暑さに負けない牛を一応は目指したいと思っています。
 なぜかと言えば、自然界には守ってくれる何も無いからです。
 野性の世界では、暑かろうが寒かろうが、どういう条件でもそのまま受け、死ぬものは死んでしまうのです。

 それから比較すれば条件的には、生きやすい環境整備に努めてきたつもりなので、また何十年か掛けて牛の野生をもっと引き出し、そんな事に負けない牛作りをしたいものです。
 牛の健康状態は食欲・排便・毛ツヤ・乳量・繁殖・歩行などに現れます。

 私たちのように、薬に頼らない経営では主食の草が食えないのは致命的です。
 ですから草を持って行って済む時には、草を持って行ってあげたいものです。
 ちょっとの間の辛抱ですネ。
 そして美味しい牛乳をお届けしたいと思います。草々。