1.放牧地()
①放牧地面積1㌶当たり、成牛換算2頭まで。
(成牛1頭→育成牛1歳では4頭、2歳では2頭とする。)
②牧区はできる限り区切らない。
(1牧区を広くし、牛群の自由行動確保のため。)
③化学肥料・薬品類(除草剤・殺虫剤等)は一切使用しない。
④酸性矯正の石灰投与(貝殻やくず石灰等)は積極的な使用をする。
⑤草生はシバ主体草地がベストではあるが、要するに充分に草を食える環境整備をする。又、シバの混生を妨げてはならない。
⑥原則として昼夜放牧、厳寒期のみ昼間放牧。(冬も昼夜放牧が最良)
2.受精・出産・哺乳()
①種付けは主に雄牛による自然交配であるが、人工授精でも可。産哺乳(受精卵移植やクローン、遺伝子操作などは絶対に不可。)
②発情異常等は自然回復を待ち、ホルモン等、薬品に頼らない。
③分娩は厳寒期以外は原則として、放牧地での自然分娩とするが、分娩房があれば室内でも可。
④仔牛の哺乳は原則として全乳哺乳とする。自然哺乳ならベストである。
(脱脂粉乳、人工乳、その他代替飼料等も不可。)
⑤牛乳出荷は出産後10日以上経ったものでなければならない。
3.管理・その他()
①素飼料は100㌫自給が前提である。夏場は放牧地の草を中心に、補食にも草を使用、冬場はサイレージと乾草だが、デントコーンは作らない。
(農薬使用が前提となる事、種子が輸入で毎年多額になるため。)
②濃厚飼料は成牛1頭、日量5kg迄とし、安全に配慮を欠くものは使わない。
③田野畑では冬場の海産副産物のワカメクズ等の給与はミネラル補給に良。v
④平均泌乳量を1頭/5000kg(日本のそれは8500~9000kg)迄とする。
⑤薬品及びビタミン、ホルモン剤その他の混合飼料を絶対投与しない。
4.治療()
①一般薬品投与→5日間乳肉出荷禁止。
②抗生物質投与→10日間乳肉出荷禁止。
5.採草地()
①放牧地、採草地、及び使用する圃場に薬剤使用地は認めない。
②化学肥料は元肥又は追肥として、年1回のみ記録使用可。
③主に有機質肥料での生産が原則。
④酸性矯正はⅠの放牧地の④に準ずる。
⑤放牧地と採草地の草種をハッキリと区別。
⑥成牛換算1頭に対し最低20㌃なくてはならない。
⑦冬越草量の収穫減に対し、購入素飼料に頼らず、牛の減頭で対処する。
⑧灌水は放牧地、採草地とも大いに良し。
追 記
冬越し素飼料の確保は基本的であり、成牛1頭/10㌧±10%(生草換算)必要とした前提で考察した。
また、田野畑村の冬越しは11月中旬~5月中旬までの6ヶ月であることが前提である。
①放牧地面積1㌶当たり、成牛換算2頭まで。
(成牛1頭→育成牛1歳では4頭、2歳では2頭とする。)
①は創造生産の基本です。
大地に根ざすと言うからには、牧山の面積や採草地の面積の、
裏付けがあるかないかが、キーポイントでしょう。
そして放牧乳牛1頭に対して、どれぐらいの面積を与えるのが
ここの自然の条件にあっているのか、生態学的な見方を要求されるところです。
②牧区はできる限り区切らない。
(1牧区を広くし、牛群の自由行動確保のため。)
②の意味は、群でのボス牛のリードによる自然行動の助長です。
日本では皆無に等しい発想です。
逆に一般的な牧区を人為的に区切るのは、効率的な草地利用の為で、
これをすすめる方の判断には、
ここの自然のままに。
山々と空気と太陽と乳牛とのやりとりのリズムを信じて。
人も牛も生活することを忘れてしまって。
と自分の都合による判断が多いように思います。
③化学肥料・薬品類(除草剤・殺虫剤等)は一切使用しない。
③日本人はハエやカが出ると、殺虫剤で一網打尽にするくせがありますが、
草地でも望まない草が増えると、やはりせんめつを望みます。
それには除草剤が最適と言うことになるのです。
穀作民族で田んぼに米を作れば、稲以外は雑草です。
畑でウリやナスを取る時は、ウリやナス以外は雑草です。
日本農業の歴史は雑草との戦いの歴史だったと言っても良いくらいです。
米や畑作不可能な厳しい自然条件の所に、
人が生きる為に草やコケを食べて生きてきた動物を、
そのまま食う形から畜産になってきた先進国との歴史の違いを感じます。
日本には家畜が活用できる草は沢山ありますが、
雨量と四季に恵まれない畜産先進国とは比べ物になりません。
(故に穀作農国)少々悪い草でも虫でも、
千年家を目指す山地酪農家はそれも許容する心が欲しいです。
④酸性矯正の石灰投与(貝殻やくず石灰等)は積極的な使用をする。
④は健全農業の基本の問題です。
そもそも日本の大地は、その恵まれた気象条件の1つ、
雨量の多さが故のデメリットに、土壌の酸化があります。
この酸性土壌の矯正は健全な作物を作るのに絶対的に必要な条件です。
ただ、広大な牧山や採草地を相手に、
一般的に使用されている炭カル(炭酸カルシウム)を使用することは、
経済的にも労力的にも、効果が期待できません。
畑作園芸では面積も狭く、即効性がなければダメですが、
粉砕状のために効果が長続きしません、山地酪農の場合は、
安価で効果が長期間続くものを考えたいものです。
一度撒いたら20~30年以上効果が持続する、
くず石灰や、安価な小粒原石か、浜で廃棄に困っている各種貝殻の投入などは、
促進したい良い事です。
⑤草生はシバ主体草地がベストではあるが、要するに充分に草を食える環境整備をする。又、シバの混生を妨げてはならない。
⑤は放牧牛の糞尿と、畜産農家の糞尿の確実な効果があるので、
あわてずに時を重ねる事です。
牧山は肥えて来た所からだんだんに良い草になってきます。
また徹底放牧をしていると自然にシバが出てきますが、
一般的にはシバは敵視されており、
お金をかけて排除しているのが現実です。混生や進入を妨げてはならないのです。
⑥原則として昼夜放牧、厳寒期のみ昼間放牧。(冬も昼夜放牧が最良)
⑥は私には当然のことです。
大自然を相手にして恩恵だけを受けるのではありません。
厳しさも牛たちは命がけで受けているのです。
それを守り育てるのが我々牛飼いの役目です。
(充分にやれないで、申し訳なさの連続ですが?)
厳しさを共に乗越えてこそ、
安泰のありがたさを心から享受できるのだと思っています。
金力と機械力でひねりだした農産物ではなく、
大自然からの恵みとして頂戴した牛乳の意味を、
信念として後世に引き継ぎたいものです。