第127号・平成19年10月1日発行
発行者 : 田野畑・山地酪農牛乳
住所  : 岩手県下閉伊郡田野畑村蝦夷森161-3
編集・文責 : 吉塚公雄  
tel/fax  0194(34)2725
Eメール:  yoshizuka@yamachi.jp(吉塚農場)
       yamati@juno.ocn.ne.jp (熊谷農場)
  ホームページ http://yamachi.jp/


  牧山交流会も終り秋本番になって来ましたネ。緑の季節、一年間は早いもので、私たちには半年で一年分の草を収穫し、冬を越して元気に春を迎えるための準備が出来るかどうかが、来年を占うことにもなりますが、残すところ一ヶ月しかなくなって来ました。あとどの位の草が採れるのでしょう。

 秋は栗・クルミ、春は山菜、楽しみも生んでくれる牧山です。深山はちょっと不便ですが、広い生活環境は、子育てには最高の環境だとも思います。隣近所に気を使うことなく、悪い時にシッカリ叱れたり、大笑いができたり、自由に思う存分子育ても出来ると言えます。
  来訪される町の方々にはちょっと羨ましいかも知れませんが、それが田舎の良さでもありますネ。酪農は生き物を飼う仕事でもあり、小さい子どもには教育素材も沢山あります。性教育も小さい時から自然にできるのも良いことです。
  多忙な時に子どもを放って置いて、泣こうが叫ぼうが自由にして置けるのも、こういう環境だからでしょうネ。一歩間違えば虐待?ここがアメリカなら逮捕されているかも・・・?
  牧山の真髄は、牛たちには日々の生活が営める草を生み出し、我々には木の実や山菜、そしてキノコなど嬉しい食べ物も生み与えてくれます。そして訪れる人々には癒してくれる、と言うように良いものを次々と生み与えてくれます。そして牧山そのものも、年々成長を続けるのです。日陰樹に残した木々は立派な林となって成長しています。延長線上にミズナラ・ケヤキなど、何百年も経てば大変貴重な家具材に変化します。ここから人間の生き方も無理やり学んでみれば、時間が経てば経験を積み、人々と接して成長して、益々魅力的な人間になるのが本当なのでしょう。・・がしかし、いつまで経ってもガキのままと言われて久しいのは56ツラ下げてる自分でした。 公雄拝

 


      シリーズ57

                    

このシリーズは、私が学生時代にご指導頂いた故猶原恭爾(なおはらきょうじ)博士に、山地酪農家になる者はこれを読みなさいと報徳全書を示されました。私がサラリーマン家庭に育ったにも拘らず、実際の入植を決心させてくれたきっかけとなった本でした。生き方の問題をいろいろな例を出して考えさせられましたが、人間に生まれた以上、人として忘れてはならないものが沢山あったと思います。「まき」の紙面は限られており、どこまで求められるか分かりませんが、シリーズにして素晴らしい内容を少しずつ考えて行きたいと思います。どうぞよろしく。又、一層言葉を簡略にすることに努めます。  志ろがねの牧 吉塚 公雄

                                      
  報徳記 巻五  二、細川領の復興と負債の償還

  細川候は本家分家の長年の不和が、先生の教えによって解消し、親族のよしみを取り戻すことができたので、心新たに先生の教えをいよいよ信じ、心を込めた直書をしたためて領民を育て、上下の憂いがなくなるように、天保五年十二月、富国安民を実現する仕法を先生に依頼した。次いで中村玄順は翌年二月、君命を頂き桜町に至り、主君の直書(前とは違うもの)を持参して、その懇切な希望を述べた。
先生がそれらを読んでみると、「忠・孝を全うするためにこの大業を依頼したい云々」との誠意が、文面に満ちていた。先生は・・・・領主がこの志を立てた以上、何事も成就しない事はない。しかし諸侯の領内を復興するというのは尋常のことではない。ことにわが主君の命令がなければ、他藩の請求に応ずべき筋道はない。・・・・と考え、玄順に向ってこう言った。
「あなたの主君は、富国安民の大業を行おうと、私に依頼してこられたが、私はどうして諸侯の領内復興の道に関与できよう。ただ固辞するほかはなく、全く御依頼をお受けする筋合いはない。けれども、あなたの主君が今まさに仁政を行われ、民衆が恩恵を受けようとしている時に私が固辞すれば、折角の計画は無になってしまう。私の主君は温かいお方で現在天下の執権、自藩他藩の区別なく天下の民を安ずる事に心を痛めておられる。これをお聞きになったなら、一諸侯でも国民を安じようとしておられるのを、必ずお喜びになるに相違ない。私が家臣の身として、君命を受けずにひそかに諸侯の依託を受けることは、どうして人臣の道であろうか。あなたの主君は何でこれを私の主君に請われず、直接私に請われるのか。」玄順は驚いて答えた。「いや間違っておりました。事を急いだあまり、この筋道を忘れていました。早速主君に言上して、小田原候に嘆願いたしましょう。」先生は「是非そうせよと言うのではない。ただ順序が違うことをお話ししただけだ。私からもこの依頼があった事を言上しよう。」玄順は江戸に帰ってこれを主君に告げた。主君も驚き正に指摘の通りであるとして、家老に命じて小田原候に詳細に趣旨を告げさせた。小田原候も大変喜んで取次ぎを通じて、「領村復興の道を二宮に依頼されることは異存ない。けれども二宮には宇津家の復興を命じてあるので、この上他の諸侯の領内も復興せよと当方からは命じにくい。彼は当家の家来ではあるが、非凡の人物であって筋道が立たなければ領主命令でも承服しないのである。もし誠意を持って再三依頼されるならば、彼は真心に感じて請いに応ずる事もあるであろう。」と答え、先生の言上に対しては「天下の民に自藩他藩の区別があるべきでない。そちが寸暇を見て、これを救助する事ができるのであれば、余の喜びはこれに勝るものはない。」と使いを通して先生に伝えられた。つづく




 【大地の贈り物】
  9月中旬から、急に秋の寒さに変わりました。秋になると、(栗・クルミ・山ナシ・キノコ・場所によっては、ヤマブドウやコクワ(サルナシ)・漢方薬になる植物)など、その他にも沢山、自然のご馳走に囲まれます。山の色も、赤や黄色に染まります。山に放牧された牛達は気持ち良さそうに、野草やシバを食べています。
 【愛情は、心を裕福にする。】
 先月は、いじめの事を書きました。いじめられる人は一番大変だけど、いじめる人も心のどこかが大変だからやるんだろうなあと思います。テレビを見ていても凄く感じます。いじめる人達の家での生活を見ると、家庭環境では、大金持ちで裕福な生活をしている子や、学校でも優秀な子、中には、家庭がメチャクチャなところもありました。いじめている子の見えない部分を追求して見ると、どの子も周りからの愛情や親の愛情に飢えている子なんだろうなあと思います。愛情と言うのは、優しくする事だけでなく、わがままをした時や、してはいけない事をした時に叱る事も愛情なんだよと父が言っていました。僕の兄弟は7人いますが、父と母は子供達一人一人の気持ちを、心から受け止めてくれます。学校で、嫌な事があった時や、何かうまく行かなくてストレスが溜まっていた時など、子供達の様子がおかしいと感じた時には、呼び出してジックリ話を聞いてくれます。心に溜まっている物を全部外に出す事で、次の日には、気持ちがスッキリした気分で一日を過す事が出来ました。父と母は、お金はありませんでしたが、愛情と牧場の借金が沢山ありました。
 【高校時代の人間関係】
 僕は、家から学校までの道のり(片道15k)を3年間、自転車で通いました。この頃は体も筋肉質でガッチリしていたので、いじめには合いませんでしたが、同級生や若い先生方に良くからかわれていました。僕に、言いやすいようで毎日のようにからかわれていましたが、自分も楽しんでいました。親のお陰で心も強くなったのか、周りに何を言われても、何とも思わなくなっていました。高校時代は、本当に楽しかったです。同級生や先輩、そして先生と楽しく過せました。今では、中学時代や高校時代の同級生に声を掛けて焼肉をやったりしています。ここまで来れたのは、本当に親のお陰です。どんな時も、心を掃除してくれたお陰で、何を言われても何とも思わなくなりました。
【2年の酪農実習を終えて】
 2年間の実習を終えてから、父の後を継いでいます。次の年には牛乳配達も教えて貰いました。田野畑村・岩泉町・盛岡市・紫波町も一部だけ・今年の2月に始めた宮古市を配達しています。発送の方では、北海道から九州まで牛乳を買ってくれるお客さんがいます。沖縄県にも、何回か送った事があります。本当に山地酪農牛乳のスタッフ一同は、田野畑村の地元の人を始め、牛乳を買って応援して下さっている沢山のお客さんからも、愛情のこもった心温まる応援の言葉を頂きながら、いつも、励まされています。地元の方やお客さんにまで心の掃除をして頂いている有難さは、幸せな気持ちで一杯なのですが、自分たちが失敗ばかりして、お客さんに迷惑を掛けてしまっており、本当に申し訳ない気持ちで一杯です。それにもかかわらず、牛乳を止めずに買って下さっている皆様の愛情のお陰で、今も山地酪農牛乳は、続いております。これからも、皆様の期待を裏切らないよう山地酪農牛乳の味を守って行きたいと思います。今後ともどうぞ宜しくお願い致します。


                 

  「我が家のトイレ」〜倫理法人会から学ぶ〜


 私達吉塚一家は常に第2牧場開拓実現に向けて精一杯考え、そして父が30年以上守り続けてきた“志ろがねの牧”を家族みんなで力を合わせこれからも守って行きたいと思っております。そして、家族は勿論私も第2牧場開拓は何が何でも実現するという強い意気込みであります。でもどんなに夢や目標や強い気持ちがあっても、様々な事情がかさなりなかなか思うように行きません。まさに今の私達の現実がこんな状態です。また、自分の若い労力をすぐに開拓に向ける事が出来ない現実、本当に悔しいし辛いです。そして「早く開拓を始めたい!早くやりたい!早く、早く!」というふうに興奮し、焦る気持ちが結局は去年の私みたいにチェーンソーで木ではなく、足を切ってしまったり、スズメバチの大群に襲われ、大きな梨の木から梨ではなく我々兄弟が落ちてしまうような、生きるか死ぬかという命懸けの事故につながるような経験もしています。そんな時私達の考え方を大きく支えてくれたのが、トイレの便座に座った時正面に見えるように掛けてある倫理法人会の日めくりカレンダーです。家の皆は毎日これを見て色んな事を学びながら気持ちよく用を足す事が出来ます。たまに気持ち良過ぎてなかなか出てこないこともあり、人が多い為に込み合い、頑固親父が「いつまで入ってんだー!」なんて叫び声を上げる事もよくある事です。そして9月29日いつもの様にトイレに入り用を足しながら、29日(至誠を尽くして時を待て)、解説(物事には全て旬がある。人の為す事にも成る時とならない時がある。ならない時は「未だ時至らず」と受け止め、黙々と努力を傾けよう。やがて必ず時機が来る。)「そうか心配することはない、今自分達が目標にしている第2牧場開拓に向かって黙々と努力を傾けていけば、いつか必ず時が来る」と信じ、毎月29日が来ると、これを読んで時を待つことが出来ています。
とにかくどんな困難が飛び掛ってこようと、焦らずみんなで考え乗り越えて、これからも第2牧場開拓に向けて精一杯の努力をして行きたいと思っております。そして猶原先生の意思を継いだ父の意思を、息子である私達がしっかりと継ぎ、将来の日本に貢献できる事を目標に本気でやって行きたいと思っています。北海道での実習を終え、志ろがねの牧で後継者として精一杯頑張るつもりですが、ただの後継者ではなく、やはりシッカリと父の意思を継いで目標の開拓へと少しづつ近づいていけるように頑張っていきたいと思います。
最後に私達はいつでもトイレに入るとカレンダーをめくっては感動したり、今日1日の自分の気持ちが変わったりなど、色々な意味で沢山の自信を付けることが出来ています。皆さんも我が家に訪問された時は、勿論山へのご案内は喜んでやらせて頂きますが、山を見て頂いた後にはトイレの方にもご案内致しますので、用事のある時は是非トイレに入ってみて下さい。何か考え方、いや人生が変わるかもしれません。    草々。
      (第二農場もこうありたい?)