くがねの牧通信 2006年3月 

双子

 皆様、こんにちは! 3月に入り、ここ田野畑村もだいぶ過ごし易くなってきました。
 今年の冬は寒さが厳しかっただけに、牛達の健康管理にはいつも以上に気を遣いましたが、幸いこれまで大きな事故や病気もなく、皆元気に過ごしています。
 定期的に風邪をひいたりしているのは我々飼い主のほうで、丈夫な牛を見習わなければと思っています。
 ただ皆さん、トリノオリンピックは終わりましたが、この後もワールドベースボールにサッカーワールドカップと、今年は寝不足注意報!健康管理に気を遣う生活はまだまだ続きそうです(笑)。

 2月2日のことです。夕方の搾乳が終わり、ミルカーの洗浄をしていた私に、珍しく親父が話しかけてきました。
 顔がニヤニヤしています。
 「もう一匹出てきたぞ。」
 驚いた私は、先ほどお産を済ませたばかりの「ボンチチ号」を見に行きました。
 なんと彼女の陰部からは、またもや子牛の足が・・・。双子のようです。
 牛でも双子は時々あるものですが、私が我が家に帰ってきてから8年、初めてのことでした。
 ボンチチ号は、産まれたばかりの雌の子牛を舐めながら、陣痛にも耐え、いきんでいます。
 なんだかとても忙しそうです。
 普通なら母牛は、子牛の濡れた体毛を早く乾かそうと一生懸命舐めるのですが、一回目のお産が終わった後の彼女は、どうも舐めることに集中出来ないようで、足を上げたりお尻を振ったりと、落ち着かない様子でした。
 私はてっきり「おっぱいが張り過ぎて痛いのかな。」と安易に考えていましたが、まさかまだ陣痛が続いていたなんて!またいい勉強になりました。そしてまもなく、2頭目も無事産まれました。
 親父が今度は苦笑いをしながら報告に来ました。
 「雄だった・・・。」それを聞いたお袋と私も「えー、マジかよー。」と、がっかりです。

 「ボンチチ号」は今回が3回目のお産で、母親は我が家で数年前まで活躍していた長老牛の「ボンボン号」です。
 テレビにも何度か主演女優として出演したくがねの牧のシンボルでした。
 私が分かっているだけでも、このボンボン号の子供で現在活躍している親牛は、平成10年生まれのジューニー号、12年生まれのカエデ号、そして13年生まれのボンチチ号と3頭います。
 10頭以上お産したボンボンですから、もっと子孫がいるはずなのですが、残念ながら私が就農する以前は、誰が誰の子供か、さだかではなかったので、他には分かりません。
 今はBSEの関係で耳標(牛の耳に付ける番号札)をつけ、きっちり管理しなければなりませんが、当時はかなりアバウトだったようです。我が家だけかもしれませんが・・・。

 さて、今回の双子は、一頭目が雌、二頭目が雄でした。
 しかし、残念ながら二頭とも肉牛用して、生後一ヶ月ほどで出荷しなければなりません。
 我々が二頭目を雄と聞いてがっかりした訳はまさにそこにあったのです。
 牛の雄と雌との組み合わせの双子の場合、雄はそのまま雄ですが、雌はお腹にいる間に雄から大きな影響を受けます。
 その為、外見上は雌なのですが、中身は雄になってしまうのです。つまり見た目は雌でも、妊娠、分娩が出来ないので、乳牛としては生きられないということになります。
 これを「フリーマーチン」と言いますが、今回産まれた雌子牛も、跡継ぎとして喜んだのも束の間、雄子牛と同じようにすぐに売らなくてはなりません。しかも値段は安いのです。

 昨年は志ろがねの牧でも双子の出産があったそうです。こちらは雌が二頭。
 羨ましい限りです。この場合はなんの問題も無いので、一度に二頭跡継ぎ牛が産まれたことになります。同じ双子でも性別の組み合わせでこれほど運命が変わるとは、牛の世界は厳しいですね。もっとそのフリーマーチンの原因について知りたい方は、配達時にお尋ね下さい。それまでにもっとよく調べておかなければ(笑)。