くがねの牧通信 2005年7月 

そうダニー!

 皆様こんにちは! 雨が多いこの時期ですが、お変わりないでしょうか。くがねの牧では先月末になんとか一番草の刈り取り、貯蔵が終了しました。当初心配された収量のほうも終わってみればまずまずの結果となり、ほっと安堵しているところです。 6 月に入ってからの暑さと程よい湿りが牧草の成長を助けたようです。さて、今月の通信は先月号の「蜂」の話が好評でしたので、引き続き虫?シリーズでいきたいと思います。

 昨年の事である。何時頃の時期だったかははっきりと覚えてはいないが、夜いつもの様にお風呂に入ろうと脱衣所にいると、次男を連れてきた妻が驚きの声を上げた。「パパ ! 背中に何か刺さっている」その思いがけない言葉に驚いた私はすぐさま「なに?なに、なに???」と問い直した。「なんだ?なんだ?」と少し興奮した声で独り言を言いながら、私の背中を食い入る様に見ていた妻。息を飲みながらその結果を待つ私。しばらくの沈黙の後、妻が口を開いた。「ダニだね」そう言うと妻はその場を離れようとしたから堪らない。嫌がる妻を説得してなんとかダニを取ってもらったのだった。私としては背中に何の違和感も感じなかったのだが、皮膚に頭をめり込ましているダニを取るほうは、かなりの気持ち悪さだったのだろう。大きな悲鳴にも近い声を上げながらのダニ退治となった。この日の日中はトラクターでの草刈りをしていた。草地の周りは森林の場所も多く、草地の側へも木々は枝を伸ばしている。枝が太くなったりして邪魔になるようになると枝を払い片付けるのだが、少々の場合だとトラクターで押しのけながら草を刈り倒して行く。その時に木々の葉に付いている様々な小さな虫達もトラクターの上に落ちてくるのである。たぶんそんな時にダニに寄生されたのだろう。その日以来私は、草刈りや山に入った後には、なるべく T シャツなどを着替えるように心掛けている。しかしこの私のエピソードはほんのジャブ程度に過ぎない。これからもっと恐ろしいダニにまつわる話を紹介しよう。

 これはある青年が思い切って私に話してくれた真実の出来事である。仮にその青年を A 君ということにしよう。 A 君は今では実家に帰り、両親と一緒に酪農の仕事を頑張っているが、数年前はまだ実習生として全国各地で修行の旅をしていた。朝早くから夜遅くまで続く作業は、とてもハードだった。しかしその分、多くの充実感も味わった。そして何より、家に帰りみんなで酪農をやりたいと夢見ていた彼には、すべてが貴重な勉強だった。そんな彼が忘れたくても忘れられない体験、それは夏のとある昼下がりに起こったのである。午前中の作業を終えた彼は昼食の為、実習生専用の研修施設に戻った。昼食の前にトイレに入った彼はある異変に気がついたのだった。用を足そうとした時、右手にいつもはない感触があったのだ。びっくりした A 君は恐る恐るその感触のあった場所を見てみると、なんとなんとダニが寄生しているではないか!!恐ろしい事に A 君の大事な場所にダニが食い付いていたのである。よりによって何でこんな所にと思った A 君であったが、取らない事には何も出来ない。勇気を振り絞った彼は「えい!」と気合と悲鳴の入り混じった声を上げ、そのダニを剥いだのだった。刺されたその場所は少し赤くなっていた。ダニの大きさは 5 o程度で、余り大きくなかったのがせめてもの救いだった。もちろんダニはそのままトイレに流したそうである。

 本当に男性にとってこれ程恐ろしい話はない。私もこの話を A 君から聞いたとき、身が震える思いがしたのは言うまでもない。ちなみに A 君はその数日後、牧場の親方の背中で 2 cmぐらいまで成長した大きなダニを目撃し、いろいろな意味で震え上がったとか。青春時代のちょっと恥ずかしい体験談である。
終わり