くがねの牧通信 2005年6月 


 皆様こんにちは! 6 月に入り、いよいよ 1 番草の刈り取りが始まりました。今年は例年より春も遅く、寒い日が多かったせいか、牧草の生育状態ももうひとつのようです。多すぎず、少なすぎず、どんな年でも安定的な収量と、草にも牛にも優しい土作りが目標ですが、なかなか上手くいきません。まずは今、伸びてくれた牧草達に感謝し、事故の無いよう焦らず作業を進めて行きたいと考えています。いい天気が続きますように!!さて、今月の通信は、昨年の夏のちょっと痛いお話を皆様にお届けします。しばし、お付き合い下さい。

 2004 年 8 月、この年の夏は好天に恵まれ、気温の方も連日 30 ℃を超えていた。お陰で 2 回目の牧草の刈り取りも順調に進み、やませの常習地帯であるここ田野畑村でも今回の夏に限っては冷害の心配はしなくても良さそうである。

 そんな夏のある日、私は炎天下の下、草刈機を振るっていた。場所は通称「コバタケ」の草地。機械では刈り取りの出来ない道路沿いに続く土手の草刈である。実家に帰ってきた当初は、草を刈った後が虎刈り状態だったその技術も、今ではお手の物。自分で言うのもなんだが、土手の傾斜の角度に沿って綺麗に草が落ちて行く。私は時々振り返り、丸坊主になった土手を見ては満足して、そして歩を進めるのだった。 100m 程続くその土手の中間ぐらいに差しかかった時である。一匹の虫が私の方に飛んで来たのだった。「アブかな?」そう思った私は特に警戒する訳でもなく、そのまま作業を継続しようとした。しかし、その虫はアブではなかった。一直線に私の方に飛んで来たと思ったら、左手首にすっと止まったのだった。その瞬間「チクッ!」と思いがけない激痛が私の中に走ったのである。なんと!その虫の正体は恐ろしいかな蜂だったのだ。急いで右手でその 3 pほどの蜂を振り払ったのだが、よほど怒っていたようで、何度も何度も私に向かって飛び掛ってくる。その度に手を振ったり、草刈機の刃を振ったりして、なんとかかんとか追い払ったのだが、刺された左手首はすでに大きく腫れ上がっていた。なぜ、これ程までにその蜂は怒っていたのだろう。とにかく近くに巣があるのは確かである。私は恐る恐るその現場に戻り、巣の位置を確認しようとした。「土手の向かいには空き家があるが、その中だろうか?」思案を巡らし辺りを見回す。「あった!」蜂の巣を見た私は、ぞっと凍り付いたのだった。その蜂の巣は私が草を刈ってきた土手に作られており、上半分が綺麗に切り落とされていているではないか。そう、その巣を切り落とした犯人は、草刈機を肩から下げている私なのだー!!そしてその切り口からは蜂がウヨウヨ這い出し、巣の現状を見て大騒ぎになっていた。自分の巣を半分に草刈機で切り落とされれば怒るわけである。とにかくこれ以上は刺される訳にはいかず、他の蜂に見つかる前に私は静にその場を離れた。後からその場所を確認した親父は「よく一匹だけで済んだな」と笑っていた・・・。

 「アカバチ」とこの地方では呼ばれているその蜂は、雨が多いような年には木の上に、風が強いような年には土の中に巣を作ると祖母が教えてくれた。その巣の位置を見て、昔の人はその年の気候を予測するひとつの材料にしていたようだ。痛い思いはしたが、少し勉強になった出来事だった。ただ、牧草地の土の中に巣を作るのだけは、本当に勘弁して欲しいものである。ところで蜂に刺された左手首の腫れは、 2,3 日で退いたのだったが、なぜか 1 週間後、軽い発熱と体中に赤い発疹が現れた。「ジンマシン」だった。生涯初めての点滴を打った。蜂は怖い。
終わり